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ベゾスのクールさ ~クールの意味(後編)

更新日:

アマゾン創業者ジェフ・ベゾスは、ヘアスタイルもクールだが、内面的にも、そのままクールな人である。
前回の記事、「ホットより熱いクールの意味」でも触れたように、
彼は、アマゾンの価値観の表明として、以下のものを掲げている。

未踏の地を探検するのはクールだ
征服するのはクールじゃない
信念はクールだ
大衆に迎合するのはクールじゃない
大きく考えるのはクールだ
意外なことはクールだ

28歳で中堅ヘッジファンドの副社長


彼は、プリンストン大学を首席で卒業後(電気工学等)、金融界で働き、2社で実績を積んだ。28歳で、社員1000人規模のヘッジファンド D. E. Shaw & Co. でシニア・バイス・プレジデント(副社長)になっていた。十分な給料と将来の安定を約束された身だった。

D. E. Shaw & Co.のHP:
https://www.deshaw.com/
Wikipediaでの項目:
https://en.wikipedia.org/wiki/D._E._Shaw_%26_Co.

1994年、社内ベンチャーとして、インターネットで本を売るビジネスを社長に持ちかけるが、拒否され、独立を考える。

社長は優秀なベゾスを慰留した、
「アイデアは面白いが、君のような成功者が挑戦する必要はない。失うものの少ない者が挑むことだ。会社にとどまれ。」と説得した。

D. E. Shaw

D. E. Shaw

しかし彼は、
以下のように自問した。

80歳になったとき、
(起業して失敗して)30歳の時に多額の給料を失ったことを悔やむだろうか。ノー。
(今のまま安泰の会社員を続け)起業しなかったことを悔やむだろうか。イエス。

挑戦しなければきっと後悔する。

そうして彼はクールに動き出した。

成功確率30%と割り切ってアマゾンを創業


1994年にインターネット書店の Cadabra.com を開業。翌1995年7月には Amazon.com として正式にスタート。
創業時について以下のように述べている。

「失敗を覚悟すると、心は軽くなる」

彼は、抜群の理性的分析力と、ヘッジファンドで鍛えたクールな分析力から、
ネットビジネスの一般の成功の確率は1割と見ていた。

自信のあるアマゾンでさえ、成功確率3割、失敗確率7割と考えていたという。

自分自身がその一生と命と家族をかけてチャレンジするゲームに、これだけクールに居られる人がどのくらいいるだろうか。

うまい話にのっかかって、「こうであってほしい」「こうなってほしい」という、希望的観測を、「そうなんだ」と事実として自らを信じ込ませて進んでしまい、惨状にまで突き進む、無謀な起業家、投資家は山ほどいる。

もちろん恐れては何もできないが、危険性に正面から向き合い、リスク評価を適切に行って全力で前進する能力は見習いたい。
彼は、起業時の資金集めのために、投資を依頼する家族や友人に、ゆとりがなければ投資はやめた方がよいと正直に伝えていた。
資金欲しさに、見通しを甘くしたり、情報操作をしたりすることはなかった。

しばらくすると楽になる、などといって、自分をだますな


また、「しばらくすると楽になる、などといって、自分をだますな」とも述べている。
どこまでもリアリスティックな直面能力である。
アマゾンは、1997年5月には株式公開を果たす。

2000年のITバブル崩壊時には、IT企業の被害額としては、マイクロソフトやGoogleをもしのぐ、最大規模の被害を被りながらも、なんとか生き残った。
顧客サービス第一を貫きながら、配送業者には厳しい値引きを要求し、従業員には業界最低レベルの賃金(*1)と、高い理念と目標とを課しながら(*2)仕事に取り組ませ続ける。初期においては利益を食いつくす設備投資を何年も続けて、2001年までは、これだけ伸びていながら赤字企業でありつづけた。株主からは批判の嵐。それ以降も、設備投資優先で、利益も申し訳程度に一応毎年計上するようになったが、20年以上株主への配当はゼロのまま(株価上昇は著しいのだが)。

また、徹底してクールな合理性で、既存の小売業者を破壊しつづける。

顧客第一主義で、プラットフォームとしてのユーザビリティーや、フォローのサービスは、日本に限ってみても、楽天やヤフオクなどに対して大きく差をつけていると言える。利用者としては、かなり信頼度は高い会社になっている。
結果として、流通・小売の市場はどうなっていくのか。

物議をかもす人ではあるが、そうやって、みんなの頭をクールに冷やしているのかもしれない。

ベゾスは、2000年、NASAの代替サービスとしての民間宇宙旅行事業 blue origin計画にも乗り出した

ベゾスは、2000年、NASAの代替サービスとしての民間宇宙旅行事業 blue origin計画にも乗り出した

参考文献:
『1分間ジェフ・ベゾス Amazon.comを創った男の77の原則』(Pan Rolling 西村克己著)

*1
労働組合の国際組織、国際労働組合総連合(ITUC)が2014年5月に実施したアンケート調査で、ベゾスは「世界最悪の経営者」に選ばれた。またアマゾンは「元祖ブラック企業」ともいわれる。

*2
リーダーシップの原則(アマゾンの被雇用者向けサイト)
https://jobs.amazon.cn/principles
アマゾンの哲学、従業員への指導を知る上で、参考になる。

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