『金持ち父さん貧乏父さん』(ロバート・キヨサキ著)は、「私」が、金持ち父さん(友人であるマイクの父さん)と、貧乏父さん(自分の父さん)の両方から、人生や仕事について、いろいろ教わるが、その考え方がまるで違うという点を、面白く描いた、自己啓発本、兼、会計ビジネス本、兼、不動産投資本である。
この本の、精神的な側面での最重要ポイントは、「テキサス人のようなものの考え方をしろ」の話だろう。
金持ち父さんが教える。
「私が言いたいのは、危険や、それに成功したときの褒美、失敗したときの代償といったものに対するテキサス人の態度が、他と違うってことだ。つまり、人生の舵取りのしかたが違うんだ。要するにスケールが大きいんだな。・・・勝ったときはテキサス人はそれを誇りにするが、負けたときはそれを自慢する。」
金持ち父さんは、・・・私に、人が金銭的に成功を収めることができない最大の理由は、慎重にやりすぎるからだとよく話してくれた。「人は損をするのが怖くて、そのために損をする」というのが金持ち父さんの口癖だった。
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向上していく人生を進むか、下降していく人生を歩むか。その分岐点は、「失敗(や苦痛)に対して、どのような姿勢をとるか」にあるといえるだろう。
貧乏父さん側の人は、失敗や、苦痛を、味わいたくない、経験したくない、という感情的な逃げの姿勢をベースにして、人生を形成していく。失敗や苦痛を避けるために、冒険をしない、チャレンジをしない、そして、それを二度と味わわないように、様々なルール、行動パターンを、自分の人生に設定する。本人は、成功するために、そうしているつもりなのだが、実際、それらのルールやパターンが、その人の可能性をどんどん狭めていき、型どおりの狭苦しい人間ができてしまう。
そうして、固定観念をたくさん作り、自由に理性的に思考することができなくなっていく。
金持ち父さん側の人は、失敗や苦痛を、もちろん、理性的に、避けようとはする。しかし、失敗や苦痛を経験する、覚悟は、きちんとできている。リスクの見積もり、メリットの見積もり、きちんと理性的に整理したうえで、勝負に出る。
失敗も苦痛も、来るなら来いと、それらを怖れて逃げるのではなく、正面からそれらを経験するという気持ちを持っている。
上述のテキサス人の話では、「負けを自慢する」というのがある。ちょっと行き過ぎといえるが、負けに対して、不必要に緊張せず、それくらいリラックスして向き合って、進んで経験できる意欲があるのであれば、実際にうまくいく割合も上がるだろう。
本質的に言って何も恐れていないので、自由に思考する理性でもって、多くを学び、多くを想像し、そして創造し、さらに成長していく。
貧乏父さんは、リスクに対して感情的に反応してしまっている分、理性的な判断にもバイアスがかかる。そして適切な判断を見誤り、その分、負ける可能性が増える。株やFXなどで、損切ができない「感情的な」人は、勝つことはできない。
人生、シリアスになればなるほど、負けやすくなる。
イチローは、打率4割が期待されたシーズン、日々内外の様々な声、期待、圧力がある中、「プレッシャーでダメにならないですか?」というインタビューアーの質問に対し、「いや、これだから止められないんですよ(笑)」と、むしろその大変な状況を、すごく楽しんでいたらしい。
失敗や苦痛を、そのデメリットを十分知りながらも、恐れず、それらに覚悟のできた上で、課題に取り組もうとする人は、勝つにせよ、負けるにせよ、人生や仕事を、Playする(=遊ぶ、演じる、楽しむ)ことができる。
実際、本当の成功者にはそういった人が多い。